
ある日、東京に本社を置く企業で、福岡への事業進出を担当する社員が、新しい事務所の建設を任されたとします。
福岡に新たな拠点を設けることになったものの、地元の建設会社には詳しくありません。
どの会社に相談すればいいのか。
施工実績は十分なのか。
安心して任せられる会社なのか。
これまでならGoogleで「福岡 建設会社」「福岡 事務所 新築」などと検索し、いくつものホームページを開いて比較していたでしょう。
ところが、その担当者はChatGPTを開いて、こう質問します。
「東京の会社です。福岡に新しい事務所を建設する予定なのですが、地元で実績があり、信頼できる建設会社を教えてください」
AIは質問に応じて、いくつかの建設会社を紹介するかもしれません。
担当者はその回答を参考に、気になった会社のホームページを確認し、問い合わせ先を絞り込んでいきます。
ここで、少し考えてみてください。
もし、その候補の中に、あなたの会社が入っていなかったら?
地元ではよく知られた老舗企業。
長年の施工実績があり、数々の賞も受賞している。
それなのに、東京から初めて福岡の建設会社を探す担当者には、その価値が伝わっていないかもしれない。
地元では知られている会社でも、遠方のお客様にとっては、初めて出会う会社です。
今回は、そんなAI時代の新しい商談の入口について考えてみたいと思います。
これまで、取引先を探す入口として、Google検索は重要な役割を担ってきました。
「福岡 建設会社」
「福岡 事務所 新築」
「福岡 オフィス 建設」
検索結果から会社を見つけ、ホームページを開いて比較する。
そんな探し方に、今、新しい選択肢が加わっています。
AIに相談してから、会社を探す。
例えば、
「福岡で事務所の新築工事を依頼できる会社は?」
「東京の企業が福岡に進出するとき、相談できる地元の建設会社は?」
「福岡で、オフィスや事業所の施工実績が豊富な会社は?」
このように、自分の状況や希望を文章で伝えて、候補となる会社を探すことができます。
さらに、
「地元で長年の実績がある会社がいい」
「設計から施工まで相談したい」
「受賞歴など、技術力を確認できる情報がある会社を知りたい」
と条件を追加して質問することもできます。
Google検索でもAIによる概要やAIモードが提供され、検索結果のリンクを開く前にAIの回答に触れる機会が生まれています。
もちろん、すべてのお客様がAIを使っているわけではありません。
従来の検索も、紹介も、口コミも、引き続き重要です。
ただ、お客様が会社を知る入口が増えている。
この変化は、中小企業の経営者にとっても無関係ではありません。
私は、この変化をこんなふうに捉えています。
AIは、社長が同席できない場所で、会社を紹介する存在になりつつある。
例えば、福岡で長年事業を続けてきた建設会社の社長は、自社の強みをよく知っています。
地域で培ってきた信頼。
数多くの施工実績。
現場で磨いてきた技術。
安全や品質へのこだわり。
お客様と直接話す機会があれば、その魅力を詳しく説明できるでしょう。
しかし、東京の担当者がAIに質問しているとき、その場に社長はいません。
営業担当者もいません。
代わりに、AIが会社について説明しているかもしれないのです。
そのとき、
「福岡を拠点とする総合建設会社です」
という説明だけで終わっていたら、どうでしょうか。
本当は数々の賞を受賞するほどの実績があるのに、その価値が伝わらない。
長年積み重ねてきた技術があるのに、他社との違いが見えてこない。
そんな可能性もあります。
もちろん、AIは会社の正式な営業担当者ではありませんし、その回答が正しいとも限りません。
それでも、気になることがあります。
「AIは、うちの会社を何と紹介しているのだろう?」
今、私はある老舗建設会社のホームページ再構築に関わっています。
その会社は、地元で長年にわたり事業を続け、数々の受賞実績を持つ建設会社です。
地域に根ざした歴史がある。
積み重ねてきた施工実績がある。
評価されてきた技術や仕事がある。
ところが、現在のホームページを見ると、そうした会社の強みがほとんど伝わってきません。
会社の基本情報は掲載されています。
しかし、
「なぜ、この会社が長年選ばれてきたのか」
という大切なことが、十分に見えてこないのです。
これは、決して珍しい話ではないと思います。
長年事業を続けてきた会社ほど、自社の実績や技術を当たり前のものとして捉えていることがあります。
「地元では知られているから」
「仕事を見てもらえれば分かるから」
「紹介で仕事が来ているから」
それは、これまで積み重ねてきた信頼の証でもあります。
でも、東京から初めて福岡の建設会社を探す担当者はどうでしょう。
会社の歴史も、技術力も、受賞実績も、まだ知りません。
地元の人にとっては有名な会社でも、遠方のお客様にとっては数ある候補の一社です。
ましてAIは、社長の頭の中にある経験や、現場で積み重ねてきた信頼を、そのまま知ることはできません。
Web上で確認できる情報が乏しければ、会社の特徴を理解するための材料も限られます。
実力がないのではない。
実力が伝わっていない。
今回のホームページ再構築を通じて、改めて感じていることです。
例えば、建設会社のホームページに、
「〇〇建築賞 受賞」
と書かれていたとします。
それ自体が素晴らしい実績です。
しかし、東京の担当者が知りたいのは、賞の名前だけではないかもしれません。
どんな建物が評価されたのか。
どのような技術が使われたのか。
どんな課題を解決したのか。
発注者や利用者に、どんな価値を生み出したのか。
こうした情報まで伝わると、受賞実績の意味がより明確になります。
施工実績も同じです。
完成した建物の写真を掲載するだけではなく、
「どんな要望があったのか」
「どんな工夫をしたのか」
「何を実現したのか」
まで説明する。
例えば、事務所の新築を検討しているお客様なら、過去のオフィスや事業所の施工事例から、その会社の経験や対応力を判断したいでしょう。
施工事例は、単なる実績紹介ではありません。
会社の技術力や対応力を伝える、大切な情報です。
AI検索対策というと、特別な技術が必要だと思われがちです。
でも、その前にできることがあります。
会社の中に眠っている価値を、初めて知る人にも分かる言葉にすること。
それが、人にもAIにも会社を理解してもらうための土台になります。
ここで、3つの質問を考えてみましょう。
質問A
「福岡で信頼できる建設会社を教えて」
質問B
「東京の企業が福岡に事務所を新設するとき、相談できる建設会社を教えて」
質問C
「福岡で、建築に関する受賞実績があり、長年地域で事業を続けている建設会社を教えて」
どれも建設会社を探す質問ですが、お客様が重視していることは違います。
質問Aでは、信頼性。
質問Bでは、事務所建設への対応力。
質問Cでは、技術力を裏付ける評価や企業の歴史。
同じ会社でも、質問の仕方によってAIが挙げる候補や説明が変わることがあります。
もし、受賞実績が豊富な会社なのに、ホームページでその情報がほとんど紹介されていなかったら。
AIがその実績を把握するための材料は限られるかもしれません。
ただし、情報を掲載すれば必ずAIの回答に登場するというわけではありません。
AIの回答は、質問の仕方や利用環境、参照できる情報などによって変わります。
大切なのは、AIに名前を出してもらうことだけではありません。
お客様が知りたい会社の強みを、正確に伝えられる状態にしておくこと。
ここに目を向けたいのです。
では、AI検索対策は何から始めればいいのでしょうか。
難しい分析ツールを使う前に、まず試してみたいことがあります。
自社のお客様になったつもりで、AIに3つの質問をしてみてください。
「福岡で信頼できる建設会社を教えて」
「東京の企業が福岡に新しい事務所を建設するとき、相談できる地元の建設会社を教えて」
「福岡で、長年の実績があり、建築に関する受賞歴を持つ建設会社を教えて」
回答が出たら、少し観察してみましょう。
自社の名前は出てくるでしょうか。
どんな会社として説明されているでしょうか。
事実と違う説明はないでしょうか。
受賞実績や施工実績は正しく伝わっているでしょうか。
参照されている情報は、現在の会社の姿と一致しているでしょうか。
そして、気づいたことをメモしてみてください。
名前が出てこなくても、すぐに落胆する必要はありません。
一度の質問で、AI検索全体の評価が決まるわけではないからです。
むしろ、回答をきっかけに自社のホームページを見直してみてください。
「この実績が掲載されていなかった」
「会社の歴史が十分に伝わっていない」
「施工事例の説明が少なかった」
そんな発見があるかもしれません。
まずは、自分たちが伝えたい会社の姿と、Web上で伝わっている会社の姿を比べてみる。
それが第一歩です。
今回の老舗建設会社のホームページ再構築でも、大切にしたいことがあります。
それは、単にデザインを新しくすることではありません。
もちろん、見た目の美しさや使いやすさは重要です。
でも、それだけでは十分ではありません。
長年積み重ねてきた歴史。
数々の受賞実績。
施工現場で磨いてきた技術。
地域との信頼関係。
そうした会社の価値を整理し、初めて訪れた人にも伝わる形にしていく。
ホームページを作り直すことは、会社の価値を伝え直すことでもある。
私はそう考えています。
そして、今回の再構築では、AI検索への対応も意識しています。
ただし、AIのためだけに特別な言葉を並べるわけではありません。
実際の会社の姿を正確に伝える。
お客様が読んでも分かる。
AIが情報を参照するときにも、会社の特徴を理解する材料がある。
そんなホームページを目指しています。
地元で長年知られている会社が、遠方のお客様にも正しく理解される。
そのために、Webが果たせる役割は大きいと思うのです。
AI検索という新しい入口が生まれたことで、お客様と会社の出会い方は変わり始めています。
これからは、社長が知らないところで、AIが自社について説明する場面も増えるかもしれません。
だからといって、焦って新しい対策を始める必要はありません。
まず考えたいのは、
「お客様は、どんな言葉で自社を探すのだろう?」
そして、
「そのとき、自社の本当の価値は伝わるだろうか?」
ということです。
地元で知られている会社でも、東京のお客様にとっては初めて出会う会社かもしれません。
実績がある。
技術がある。
信頼がある。
それなのに、ホームページからは伝わってこない。
そんな状態は、あまりにもったいない。
会社が積み重ねてきた価値を、正確に、具体的に、分かりやすく伝える。
それは、AI検索対策である前に、お客様に対する大切な情報提供です。
AIに選ばれる。人にも選ばれる。
そのために、まずは自社のホームページが何を伝えているのか、改めて見直してみませんか。
長年積み重ねてきた実績や技術、会社の強み。
それらがホームページで十分に伝わっているでしょうか。
AI検索時代のWebでは、会社の価値を正確に伝えることがますます大切になります。
まずは、自社のWebが現在どのような状態なのか確認してみましょう。

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